自由の学風にふさわしい京大総長を求める会

私たち「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」の発した公開質問状への回答を掲載しています。

3氏から公開質問状への回答が寄せられました

 私たち「自由の学風にふさわしい総長を求める教員有志の会」の公開質問状、と公開質問状への回答が、大嶋正裕氏(工学研究科・研究科長)、寶馨氏(総合生存学館・学館長)、時任宣博氏(研究連携基盤・基盤長)から寄せられました(お名前は50音順)。村中孝史氏(法学研究科・教授)からは回答できない旨の返答が寄せられ、北野正雄氏(理事)、湊長博氏(理事)からは現在(7月11日正午)まで返答がありませんでした。
 回答を寄せてくださった3氏のご協力に感謝しつつ、回答者別(質問文は省略)、質問別に回答を掲載させていただきます。

 このブログをご覧になった方は、質問・回答についてコメントを書き込むことができます。人格的な誹謗中傷にあたる表現は避けながら、京都大学のあるべき姿にかかわる議論の場としていきたいと思います。

総長選挙第一次候補者

7月3日に総長選考会議が選考した第一次候補者6名の名前が、総長選考会議より「意向調査投票資格者」宛に送られてきました。文書は7月3日付ですが、部局事務局より送信されてきたのは今日でした(部局により違いがあるかもしれません)。

京都大学の総長が誰になるのかということは、投票資格のある教職員ばかりでなく、投票資格のない教職員、学生、未来の学生となるかもしれない若者とその保護者、近隣地域住民、ひいては今日の日本における大学のあり方の中に関心を抱いている人々の多くが注視しています。投票資格の有無にかかわらず広く知らされるべきです。

なお、第一次候補者6名にはすでに公開質問状を送付しており、10日を期限として回答をもらう予定です。

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公開質問状

公開質問状

○質問1:学生との対話のチャネル

 京都大学現執行部は、学生担当副学長による月1回の学生向け情報公開連絡会を廃止し、学生との少人数での話し合いも打ち切るなど、学生との対話のチャネルをせばめているように思われます。その結果、当事者の学生と事前の意見交換を全く行わないまま、学生の大きな利害が関係する事項についての決定を下すことになっています。これは学生の自主性を尊重するという京都大学の教育方針とも整合しないように見えますし、学生側の実情に合わないちぐはぐな判断をしてしまうという弊害も起きているように思われます。

 こうした、京都大学の学生に関する事項の決定のあり方、学生と対話する姿勢についてどのようにお考えでしょうか。

  

○質問2:吉田寮裁判

 京都大学現執行部は2019年4月26日に吉田寮生20名を選択して建物明渡請求訴訟を京都地方裁判所に起こしました。また、コロナ禍さなかの2020年3月31日に新たに25名を追加提訴しました。まもなく125年周年を迎える京大の歴史で、初めて大学当局が学生を裁判に訴えるという事態が起こりました。

 第一次提訴の直前、2019年2月20日吉田寮自治会は2条件(2015年改修済み食堂棟の利用、清掃・点検のための現棟立ち入り)が認められるならば全寮生が新棟に移転すると表明しました。しかし、現執行部は、新棟移転を受け入れた吉田寮自治会の意向を検討せず、教授会や学内委員会でも審議しないまま提訴を決定しました。

 この吉田寮裁判の今後の対応について、どのようにお考えですか? また、裁判を取り下げる選択肢についてのお考えもお聞かせください。

  

○質問3:立看板問題

 京都大学現執行部は、2018年12月に「京都大学立看板規程」を制定し、翌年5月にこの規程を根拠として立看板を撤去しました。現執行部は、京都市からの「指導」を受けて、立看板撤去を決めました。これを歓迎する意見もあった一方で、「京都市屋外広告物条例」の主眼が営利目的の広告物の取り締まりである以上、京都市当局と交渉しながら大学の外に向けて置かれる立看を存続させるべきだという意見や、もっと歩行者の安全性と景観に配慮したものにすれば復活しても良いのではないかという意見もメディアで取り上げられました。

京都大学立看板規程」や立看文化の存続について、どのようにお考えですか?

  

○質問4:学生処分

 京都大学現執行部は、2019年9月10日付で、3名の学生を停学(無期)処分としました。その内の2名はオープンキャンパス初日(2018年8月9日)に本部構内のクスノキ東側に設置された立看板を撤去する職員の行為を妨害したことに加えて、厚生課窓口及び廊下で職員の行為を妨害したという理由、もう1名は後者の理由に限られます。

  この処分は、重すぎる処罰だという意見が教員の中に多数あります。実際、教授会での長時間におよぶ審議を経て部局から提出された学生の処分案を、学生懲戒委員会が軽すぎるということで二度も突き返しました。

 このような学生処分のあり方や、執行部と学部の自治のあり方について、どのようにお考えですか?

  

○質問5:修学支援問題

   2020年4月施行の「大学等における修学の支援に関する法律」は、修学支援の対象を年収380万円未満の世帯に限定した上で、在学生(大学2~4年生)の採用者に対しては「GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること」「修得単位数が標準単位数以上であること」などの条件を課しています。また、支援対象の学生が所属する大学等の機関に対しては、「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数の1割以上、配置されていること」「法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること」といった要件を課しました。現時点では京都大学は要件を満たしているとされていますが、今後さらに要件が厳しくされることも考えられます。

 修学支援をめぐる政府・文部科学省の方針に対して、京都大学としてどのような方針で対応を進めるべきだとお考えですか?

  

○質問6:いまの京都大学に必要なもの

 いまの京都大学に最も必要なものを一言で表すと何でしょうか。その理由とそれを得るための方策もあわせてお聞かせください。

 

発起人・賛同者

「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」の発起人と賛同者です。

創設趣意書にご賛同いただける京大教員の方はどなたでも賛同者になれます。

事務局の連絡先アドレスは、komagome.takeshi.5m at kyoto-u.ac.jp です。

 

発起人(あいうえお順)

岡田直紀(農学研究科)、駒込武(教育学研究科)、高山佳奈子(法学研究科)、福家崇洋(人文科学研究所)、藤原辰史(人文科学研究所)、細見和之(国際高等教育院、人間・環境学研究科)

賛同者(あいうえお順、2020年7月14日現在)

足立芳宏(農学研究科)、安部浩(人間・環境学研究科)、伊勢田哲治(文学研究科)、伊藤正子(アジア・アフリカ地域研究研究科)、大河内泰樹(文学研究科)、梶丸岳(人間・環境学研究科)、小関隆(人文科学研究所)、小山哲(文学研究科)、重田眞義(学際融合教育研究推進センター、アジア・アフリカ地域研究研究科)、立木康介(人文科学研究所)、ティル・クナウト (人文科学研究所)、西牟田祐二(経済学研究科)、松本卓也(人間・環境学研究科)

創設趣意書

来たる総長選考にあたって皆さまへ

 

4月から5月にかけて、京都大学で総長選考が実施されます。今、京都大学は重要な岐路を迎えています。端的にいえば、京大の原点というべき、自由の学風と自治に基づく大学に戻るのか、それとも不自由と強権を強いる大学になっていくのかの別れ道に立っています。

京都大学でどのような総長を選ぶのかは、一大学の問題にとどまりません。日本の大学において、学問において、どのような未来を描きたいのかという問題でもあります。強権的なガバナンスのもとで、自由も自治も置き去りにされたまま、教職員も学生もただ「忖度」と「自粛」を繰り返すだけでよいのでしょうか。私たちは大学の構成員のひとりとして、少しでも誇れる京都大学を未来に残していく責任があるはずです。

私たちは、このような方に総長になってほしいという理想像を以下に掲げました。言い換えると総長候補にこのような総長を目指してほしいという理念を記したものでもあります。中央省庁の一支店・下請けではなく、京大が自分らしさを取り戻し、それを世界に向けて発信していくために、次の総長に何が必要かを考えたものです。

まずは自分たちがいる足元を少しでも良い働く場所、生活しやすい場所に変えていくために、総長選考に関心を持っていただき、学内予備投票、意向調査に係る投票で清き一票を投じてください。そして、以下のような理想の総長像が京大で現実となるようにご協力ください。

 

2020年4月9日

自由の学風にふさわしい京大総長を求める会

 

○京大における理想の総長像

  • 「自由の学風」を堅持する:考える自由、発言して行動する自由、そして学問の自由が常に保たれるように努力する。
  • 対話に基づいて問題解決をはかる:教職員・学生の自治を尊重し、対話に基づくボトムアップ方式で学内外の問題に対処する。
  • 多様な意見を尊重する:性、民族、宗教など多様な個性を持つ教職員・学生の立場を理解し、その意見を尊重する。
  • 研究を広く深く耕し、未来に向けて発信する:様々な分野の研究に等しく敬意を払いながら、総合大学にふさわしい研究を未来に向けて発信する。
  • 権利と雇用、安心した生活を保障する:弱い立場に立たされる教職員・学生が学内で安心して過ごせる生活・労働環境を実現する。
  • 平和の実現に貢献する:軍事研究を断乎拒絶し、教育と研究を通して平和な社会を導くように尽力する。
  • 地域社会とともに大学文化を守り育てる:京都という風土で形作られて来た大学文化を、地域社会と共同して守り発展させる。