自由の学風にふさわしい京大総長を求める会

私たち「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」の発した公開質問状への回答を掲載しています。

(回答者別)時任宣博氏の回答

質問1:学生との対話のチャネル

大学執行部が学生との対話の機会を狭めているとのご指摘ですが、現在の状況を生み出した背景も含めてその要因をしっかりと検討した上で、本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもあるかと思いますので、対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ機能しないように思います。

質問2:吉⽥寮裁判

吉田寮問題にかかる裁判に関しては、提訴(追加提訴も含む)に至る過程で、大学執行部と寮生側で問題解決に対する考え方の違いがあって現状に至ったと推察します。私は本件に関する詳細な情報を持ち合わせておりませんので、本提訴事案にかかる本学の今後の対応について現時点でのコメントは差し控えますが、早期の解決が望ましいことは確かです。

質問3:⽴看板問題

立看板問題に関しては、「立看規程」の制定により、条例遵守、景観・安全性の確保の観点から、その規格や設置場所等が定められたこと、また設置責任者や設置許可期間についても大学内の活動として適切なものとなるようにルールが定められたと理解しています。ただ、その後の立看文化等に関する報道等では、本学外構周辺における立看での対外情報発信活動が制限されたのは問題である、という扱いが多かったと思います。立看文化の存続を模索するのであれば、節度を守った形での設置や表現を現規程の下で実行しつつ、不都合な点を解消する意見・提案を大学当局に正当な手段で届けて改善を図る形が良いと思います。

質問4:学⽣処分

この質問にある学生処分の件については、処分理由に挙げられている妨害行為だけでなく、そこに至る経緯と当事者間の意見の隔たりが処分案に反映されていると推察致します。その結果、学部(部局)と大学執行部との間で処分案の内容に差が生まれたものと思います。学部の自治と大学全体のガバナンス、マネジメントは、時に互いに相容れない場合もあるかと思いますが、互いの立場を理解し双方が許容可能な解を求める不断の努力が必要だと思います。

質問5:修学⽀援問題

大学における修学支援の仕組みが、政府・文部科学省の施策として大きく変革される可能性がありますが、本学での支援制度設計は、現状で真に支援を必要としている学生に適切に対応できるように配慮されるべきであり、政府施策に迎合する形にとらわれないことが重要と思います。また、各種の奨学金や授業料免除等の制度も変革が予想されますが、日本人学生と外国人留学生の支援枠と対象者選定の条件など、より公平な制度設計が必要だと感じております。

質問6:いまの京都⼤学に必要なもの

京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。